大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)52号 判決

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨、審決理由の要点、引用例の記載内容(但し、ハロゲン化シリコンの導入方向に関する部分を除く)。、本願発明の構成(但し、密閉反覆型である事実を除く。)、本願発明がモノシランの熱分解装置であり、発熱反応方式のものであること、引用例記載の装置がハロゲン化シリコンの熱分解装置であり、吸熱反応に基づくものである事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告の主張する本件審決を違法とする事由について検討する。

原告は、その主張する取消事由(四)の2、3において、審決が原告の主張する本願発明の構成(3)、(4)について、この各要件は、引用例においても開示されている旨認定判断したのは、引用例の認定を誤り、かつ、本願発明と引用例との比較対照を誤つたものである旨主張する。

(一) まず、引用例におけるハロゲン化シリコンの導入装置についてみると、成立に争いない甲第三号証によれば、引用例の装置のハロゲン化シリコンの導入孔には孔より管内に向つて矢印が付され、その矢印の方向は管壁に向けられていることが引用例の第二図に記載されている事実を認めることができる。したがつて、この図面を一見すれば、引用例には、被告の主張するように導入ガスが担体に直接接触しないよう一たん管壁に当つてから上昇するような装置が示されているのではなかろうかとの疑いを生ずる。しかし、前記当事者間に争いのないとおり、引用例の装置はハロゲン化シリコンの熱分解装置であり、吸熱反応に基づくものである。また、引用例の装置は、その容器の外部を冷却する構成となつていることも当事者間に争いがないところ、前記甲第三号証によれば、引用例の装置がその容器の外部を冷却する目的は、その冷却壁において未反応のハロゲン化シリコンを含む凝縮物を生成せしめ、ハロゲン化シリコン、その副生物および不純物質を回収し、未反応原料を再使用することを目的とするものであつて、この目的にかなう作用効果を奏するものである事実を認めることができる。

してみれば、もし、引用例の装置の構成が被告がさきに主張するとおりであるとすれば、導入されたハロゲン化シリコンは、その大部分が未反応のまま冷却された管壁で液状となつて流下することとなり不合理である。したがつて、引用例の第二図に示された前記矢印は、単に当該孔よりハロゲン化シリコンが管内に導入されることを示すにとどまるものと解すべきものであつて、被告の主張するように導入ガスが担体に直接接触しないよう管壁に向けられていることを示すものと解するのは相当ではない。成立に争いない甲第四号証によれば、引用例であるドイツ特許第一〇四七一八一号の出願前の出願にかかる「電子技術用の純粋な半導体材料を得る装置」という名称の発明の特許公報(特願昭三五―二九八二号公報)に記載されたハロゲン化シリコンを原料とする金属シリコンの製造装置において、原料ガスが担体の全長にわたつて直接注ぐようにされている事実を認めることができるから、この甲第四号証の記載に照らしてみても、引用例に関する前記認定は相当である。したがつて、審決は、この点において事実の認定を誤つたものというべきである。

(二) つぎに、本願発明と引用例における容器壁冷却の目的、作用効果についてみる。引用例における容器壁冷却の目的作用効果については前記認定のとおりであつて、前記甲第三号証の全文を見ても、容器壁の冷却が担体以外へのシリコンの析出を防止することを意図したものである旨の記載は見出せない。また、引用例の装置がハロゲン化シリコンの吸熱反応に基づくものであることを考慮すれば、この装置は、シランを原料とする場合のように担体以外の部分での気相反応は起り難いと考えられる。したがつて、引用例の装置においては、気相反応を抑制する目的をもつて容器壁を冷却するものであると解することはできない。これに対して、成立に争いない甲第二号証によれば、本願発明の装置においては、容器壁を冷却する目的は、気相反応を抑制し、フイラメント付近に対流を生ぜしめることにある事実を認めることができる。

してみれば、本願発明と引用例とでは容器壁冷却の目的、作用効果を異にし、ひいては両者はその技術思想を異にするものというべきである。

(三) 以上認定してきたところによれば、原告主張の本願発明の構成(3)が引用例に開示されているとした本件審決は、引用例の認定を誤つたものというべきである。また、原告主張の本願発明の構成(4)と引用例における容器壁の冷却とはその技術思想を異にするものである以上、引用例のこの記載から原告主張の構成(4)を要件とする本願発明が容易に推考することができるものということはできない。

そして、本件審決は、原告の主張する本願発明の構成(3)、(4)が引用例においても開示されていることを前提に、本願発明は、引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に推考することができる旨認定判断するものであるところ、この前提が誤りである以上、原告主張のその余の点について判断するまでもなく、本件審決は違法であつて取消を免れないものというべきである。

三 以上のとおりであるから、本件審決を違法として取消を求める原告の本訴請求は理由がある。よつて、原告の請求を認容する。

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